第14回の今回は、”捕球”.キャッチボールの基本ですね.とある では、キャッチボールに限定せず、もうすこし広義な意味で述べております.
第77章
「捕 球」
野球はまず球を捕ることから始まる。したがって、「捕球」について考えてみたい。
捕球する際、網で捕球していないだろうか。
網で捕球すると、球を捕ってから投げるまでの時間がかかる。強い打球を捕球した場合、球が網に引っ掛かることさえある。捕球の基本は人指し指の付け根で捕る。これを身につけるには、グラブをはずして、素手でノックを受けるとよい。網で片手捕りする癖のある者は素手では捕球できない。グラブの網は捕球できるかできないかのぎりぎりの打球を処理する場合のみだ。
次に、体の正面で捕球する。ファンブルしても、球をすぐ拾えば間に合うし、最も確実に捕球できるためだ。簡単な打球なのに、体の横で捕球しているのは「ナイスキャッチ」ではない。横着しているだけだ。横で捕球するのは体を打球に対して真っ直ぐ向けられない場合のみだ。
内野ゴロでは、後ろに下がってはならない。前進あるのみだ。どんなバウンド、どんな強さのゴロであっても、とにかく前に出て捕球する。以前述べたように前に出なければならない理由は、第一に、バウンドの数が多くなるほど不規則バウンドする確率が高まるためだ。草野球で使う荒れたグランドでは尚更である。不規則バウンドする前に捕球を完了しておく必要がある。第二には、強いゴロに対しては前に出ることによって恐怖心を克服できる。待っていては打球の強さに圧倒され、腰が引けてしまう。その結果、いわゆる「トンネル」現象を引き起こす。
腰を落として構えることも重要だ。これはより素早く第一歩を踏み出す必要があるためだ。内野手も外野手も第一歩のスタートを可能な限り素早く、かつ正しい方向に踏み出すことが求められる。また、第一歩をスムースに踏み出すために、捕手から投手への返球の間に足を軽く動かしている(足踏みなど)を勧める。突っ立ったままだと、第一歩の際に筋肉の応答が遅くなる。
さらに、大きな声を出して構えることも重要である。先日、テレビの「あるある大事典」で筋肉の話題が放映された。ご覧になった方も多いと思う。その中で、人間は本能的に筋肉を保護しているため、本来の力の70%程度しか出さない。しかし、「火事場のくそ力」のように保護意識がはずれると思わぬ力を発揮するそうである。この保護意識をはずすもう一つのケースが大声を出すことだそうだ。したがって、声を出して構えるのと、出さずに構えるのでは捕球に対する瞬発力が異なる。
そして、何より重要なことは「何が何でも捕ってやる」という強い意思だ。この意識があれば打球に飛びつき、球際に強くなる。
【幹事補足】
筋肉の保護意識のことは初めて知りました。確かに「火事場のくそ力」らしきものは存在すると思います。ただし、この保護意識はおそらくいたずらに働いているのではないのではないかと思えます。人間が本能的に持っている意識を無理に解除するのですから、その用途は制限されなければなりません。
草野球では100%の筋力を用いなければならないタイミングは限られています。むしろ体を楽にして臨んだ方がよい場合もあります。経験的には、内野手の一塁への悪送球が挙げられるでしょう。
師のおっしゃるタイミングとは、あくまでもこの章のテーマである「捕球」に対する瞬発力に関するものであることに注意してください。