13回目の今回は、走塁です.
第90章
「足を使う」
甲子園大会で、常総学院の監督が強肩捕手のチームに対し初回から盗塁を敢行させた理由として、「強肩捕手だから簡単には走ってこないだろうと相手に思われてはいけない。走ってくるゾと警戒させることによって相手にプレッシャーをかけ、配球を直球主体の組み立てにさせ、その直球を狙わせる作戦をとった。だから、盗塁が成功するかしないかは問題ではなかった」と語ったことが新聞に出ていた。 一方、全国高校軟式野球大会で優勝した中京商業は、準決勝まではさかんに盗塁を決めたのに、決勝戦では1回も盗塁しなかった。その代わり、走者は大きなリードをとり相手バッテリーにプレッシャーをかけた。相手チームは、中京商は足が速いということを十分認識している。そこを逆手に取り、走るゾと見せかけて実際には走らず、相手バッテリーに最大限のプレッシャーを与えることに成功した。 この二つの記事は、草野球にとっても示唆に富んでいる。盗塁の目的は勿論走者を得点圏内に進め得点の確率を高めることであるが、もう一つの目的は相手バッテリーや野手に対してプレッシャーを与えることによって、攻撃をより有利にすることだ。両方の記事に共通しているのは、「足を使う」、あるいは「足を使う素振りをする」ことによって、相手にプレッシャーを効果的に与えたという点だ。盗塁を防ぐために変化球より直球主体の配球となるので狙い球を絞りやすくなる。ウェストするからカウントが有利になる。遊撃手や二塁手が牽制に入るので三・遊間や一・二塁間が広がる。 走者は可能な限り大きくリードしなければならない。頭から帰塁できる範囲ならリード可能である。当然、大きなリードをとられればバッテリーとしては気になる。特に、二塁ベースにおいてはリードが大きく、スタートがいいと、普通の脚力があれば三盗は可能である。あわてた捕手が暴投すれば得点につながる。だから、バッテリーにとってはものすごいプレッシャーとなる。 |